「今すぐできる『戦略思考』の教科書」出版のお知らせ

By 2010/11/24 No tags Permalink

このたび講談社より「今すぐできる『戦略思考』の教科書」が発刊されましたのでお知らせ致します。

経済状況が思うように回復しない昨今ではありますが、環境の変化、回復を待つばかりでなく、いかにしてこれまでにない発想とアイデアで厳しい市場に打って出るか、この点を真剣に考えなくてはならない時期にきているのかもしれません。

しかし「これまでにない発想」と一言で言っても、それがどうすれば出てくるのか皆目見当もつかないものです。新規顧客開拓、既存顧客の深堀り、言葉で言うことはとても簡単ですが、それは実際にどうやるのでしょう。

環境が厳しくなると、どうしても気合と根性で誠心誠意の顧客訪問というのが増えてきます。しかし残念ながらそれだけでは新しい取引を勝ち取ることは難しくなってきているのが現状です。誠心誠意でお客様とお付き合いすることは大切です。しかし、これは最低限の話で、言わば当たり前の事です。それに加えて、どれだけの付加価値を提供できるか、また、その付加価値を伝えられるかが本当に大切なのではないかと思います。

今すぐできる『戦略思考』の教科書の中では、実際に私たち自身が実行してきた様々なノウハウがたくさん詰まっています。ここに書かれているのは、大きな予算もなく、十分な人員もいない中で勝負するための知恵です。武器と言い換えても良いでしょう。

厳しい時代だからこそ、これまでにないチャレンジをすること。これが大事なのではないでしょうか。チャレンジには失敗もつきものです。だけど、失敗を恐れていては縮小するマーケットと共に沈むしかありません。会社に損失を与えることのないチャレンジとは何か、学びになる失敗とは何か。ぜひ本書を参考に、これまでにないアイデアというものを真剣に考えてみて頂きたいと思います。

筏井哲治

たとえばExtremeであるということ

By 2010/11/23 No tags Permalink

現代人は、つまり僕らは基本的に不感症だ。色んなものに対してとんと興味がない。最近の若者の○○離れってのは、その典型例と言える。

しかし別に不感症なのは若者だけじゃない。ビジネスにおいても似たようなことは言える。たいていのものがすでに揃っている中で、いったい次は何に投資をしたら良いのか、本当によくわからない。

これまでのひとつの投資判断には ROI(Return On Investment) というものがあった。これは投資に対する収益率を指すもので、正式には投下資本収益率というそうな。10人でやっていた作業が、この機械を導入することで1人で作業ができます。よって、こんだけのコストが削減できますよってな感じだろうか。

でも、そんなことが言えるのは最初だけ。そのうち、イノベーションと言っても機能の追加や修正程度のものになるので、最初の時ほど買い手から見た時の価値は増大しない。手動から自動に変わることで大幅な効率化が図れたが、すでに効率化されている場合はどうしたら良いのだろう。今よりさらにあと5%効率化できます、って提案をするしかないのだろうか。

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図1 イノベーションと効果

これはどんな商品にもある成長、成熟、衰退のライフサイクルと言える。これはもしかしてクリステンセン教授が言った「イノベーションのジレンマ」というヤツなのだろうか。

もう少し大きな視点で人類の歴史を振り返れば、大きなイノベーションはこれまでにいくつかあった。たとえばモビリティに関して言えば、図2のようになるだろう。

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図2 移動手段に係るイノベーション(のごく一部)

個人のモビリティで言えば人類は「走る」ところから、馬や自動車、自転車やオートバイなど様々な移動手段を産み出してきた。もちろん公共交通を加えると、バスや列車、船舶や飛行機など、他にもたくさん挙げることができる。

これから先、もしかしたら、スターウォーズやバック・トゥ・ザ・フューチャー2のようにぷかぷか宙に浮く個人用の乗り物なんてのが発明されるかもしれない(=破壊的イノベーション)けど、今のところ上記に挙げた乗り物の中で継続的なイノベーションを模索せざるを得ないのは間違いない。

だけど僕らはもう自動車が何なのか知っている。新幹線も、飛行機も、オートバイも。だって、僕たちはこれらがフツーに整備された社会で生まれ育ってしまったんだもん。だからちょっとしたCMやチラシを見ても、たいして興奮しないのかもしれない。

ここで「なんで売れないんだ。最近の若者はダメだ」なんて居酒屋で愚痴っても何の意味もない。そうなってしまったものは仕方ないのだから。このような時にこそ戦略思考である。このような場合 Primitive(原始的) – Innovative(革新的) と言う軸で、先進的な機能や、付加価値を説明するだけでは弱い。まぁ、なぜ弱いかは拙著を読んで頂くとして(笑)、たとえば軸を増やす、すなわち三次元で考えたりすると、もしかして新しい戦略が見えてくるかもしれない。

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図3 パルクールと母ちゃんの散歩

歩きよりも馬、馬よりもバイク、バイクよりも自動車、自動車よりも新幹線、新幹線よりも飛行機と考えたのが Primitive – Innovative 軸だったけど、成熟したマーケットの場合  Extreme – Boring 軸なんてもありかもしれないよ。

たとえば「走る」というものを考えた時、僕の母ちゃんが近所のオバチャンたちと散歩をしているところを見たって、面白くもなんともない。だけど、オリンピックでボルトさんが走るところを見て、多くの人が興奮したのはなぜだろう。あるいはマラソンを見て僕らが感動するのはなぜだろう。

ここで言えることは、たとえ移動手段が技術的に原始的(Primitive)であったとしても、それが常識の範囲を超えて(Extreme)いれば、観る者に強烈なインパクトや感動を与えることができるってことだ。

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図4 Primitive – HighTech / Extreme – Boring Quadrant

歩きやチャリよりも自動車を持つ事の方がカッコイイというのがこれまでの考え方。でもそれだけでは今どき「欲しい。買う!」とまで思わせることはなかなか難しい。図4にある通り、どれだけハイテクであっても、必要としていない人には興味がないからだ。逆にただ「走る」だけであってもパルクール(Parkour:仏=フリーランニングとも言う)のような常軌を逸したことをしている人たちは、であるが故に、それを見る僕たちに、強烈なエキサイトメントを与えてくれる。

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=QrdSBvtYn2M?hl=en]
パルクール

機能的に Primitive だからダメなのではない、たとえ、どれほど高機能であっても、それをツマラナく伝えている限り、製品に興味を持ってもらうことは難しい。逆に言えば、機能的に負けている製品であっても、勝負することは可能である、ということも意味する。

満たされた時代、満たされた世代に訴えかける要素の一つは、たとえば Extreme であること、といえるのかもしれない。

【蛇足】
パルクールは見てる分には面白いけど、間違っても自分でやってはなりませんよー。死んじゃうよー。2階やら3階から飛び降りて、平気なのは彼らが普通の人間ではないからです。では、僕らはどうすればパルクールをできるのだろうか。僕らは一生パルクールをできないのだろうか?それはあまりに不公平というものである。

そうだ、このような時こそテクノロジーだ。パルクールを好きなだけできるのがゲームの世界だ。アサシンクリードは、中世のエルサレムやダマスカス、ヴェネツィアやフィレンツェ、そしてローマの街を好きなだけパルクール(フリーランニング)できるよ。壮大なストーリーと、驚異的なグラフィック、そして素晴らしい爽快感は、まじでひっくり返るほど面白かった。

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アサシンクリードでパルクール

そう言えば、もうすぐアサシンクリードの最新版 ブラザーフッドが発売される。ってことは、僕自身も年末はもしかして16世紀のローマの街を縦横無尽に走り回ることになるかもしれないな。いや、別に宣伝してるわけじゃないっすよ笑

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=zzNs4-kRLaE?hl=en]
Assassin’s Creed Brotherhood E3 Trailer

なぜ『戦略思考』が必要なのか

By 2010/11/22 No tags Permalink

いやー。出ました。出ちゃいました。講談社さんより「今すぐできる『戦略思考』の教科書」です。技術書を除いて本なんて書いたことないですからね、わからないことばかりで多くの方々に苦労とご迷惑をおかけしました。

特に最初からお付き合いいただいているスカイライターの川辺さん、それから講談社で編集を担当して頂いた藤枝さん、それから執筆に多くの時間を確保してくれた我らが中林社長には心から感謝申し上げます。あざーす。

そして温かく見守って頂いた家族,友人、その他多くの皆様、本当にありがとうございます。

本書に書かれている内容の多くは、大きな権限を持たない若手ビジネスマンであっても実践可能な戦略立案の技法や、交渉の戦術、発想する手法をまとめたものです。

若いうちは居酒屋で会社の愚痴やら上司の文句を言いたくなるものですが、それはあんまり効果がありませんでした。これはマジな話。居酒屋で100回文句を言ったって会社は1ミクロンも動いてはくれないらしいです。実証済みです。

そんなのよりは、リスクがコントロールできる範囲で目標を定め、チーム一丸となって戦略的な行動を取ることです。これが僕が目指すインテリジェントチーム。インテリジェントチームを作るには全員が共有すべき戦略理論が絶対必要です。スーパーマンみたいな飛び抜けた営業マンに頼る会社は弱いです。特に中小企業になると経営的に弱い。

大切なのはインテリジェントチームを育む基盤と、戦略的思考と戦略的行動を仕組みにし、あわよくば文化にまでしてしまうことです。営業は気合だ。営業は現場で学ぶものだ。ってのはもちろん元気があって良いです。しかし、本書で述べているリデル・ハート先生の戦略理論に従えば、それは敗戦への道を進んでいます

「人員の肉体的,精神的な損耗を絶対にしてはならない」

これをやっちまっている組織は世界中に山のようにあります。そして、そう言う組織は弱いのです。なぜならば損耗しているから。精神論や気合と根性というのは、実は消耗戦であることを理解しなくてはなりません。人員の損耗を極限まで抑えながら、かつ高い効果を得られる「最小予期線」そして「最小抵抗線」を模索する。これが僕の考える戦略思考です。

これは僕独自の理論では決してありません。著名な戦略家や学者さんが考えた理論を僕が実践し、本当に効果が出たものを抜き出したに過ぎません。

僕は昔から勉強が死ぬほど嫌いでした。勉強するのが嫌いだからこそ、効率良く効果の高いものだけを集中的にマスターしてきたわけです。本書はそのエッセンスを抽出したものです。一人でも多くの人に『戦略思考』を知り、そして実践して頂きたいと思います。