たとえばExtremeであるということ

By 2010/11/23 No tags Permalink

現代人は、つまり僕らは基本的に不感症だ。色んなものに対してとんと興味がない。最近の若者の○○離れってのは、その典型例と言える。

しかし別に不感症なのは若者だけじゃない。ビジネスにおいても似たようなことは言える。たいていのものがすでに揃っている中で、いったい次は何に投資をしたら良いのか、本当によくわからない。

これまでのひとつの投資判断には ROI(Return On Investment) というものがあった。これは投資に対する収益率を指すもので、正式には投下資本収益率というそうな。10人でやっていた作業が、この機械を導入することで1人で作業ができます。よって、こんだけのコストが削減できますよってな感じだろうか。

でも、そんなことが言えるのは最初だけ。そのうち、イノベーションと言っても機能の追加や修正程度のものになるので、最初の時ほど買い手から見た時の価値は増大しない。手動から自動に変わることで大幅な効率化が図れたが、すでに効率化されている場合はどうしたら良いのだろう。今よりさらにあと5%効率化できます、って提案をするしかないのだろうか。

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図1 イノベーションと効果

これはどんな商品にもある成長、成熟、衰退のライフサイクルと言える。これはもしかしてクリステンセン教授が言った「イノベーションのジレンマ」というヤツなのだろうか。

もう少し大きな視点で人類の歴史を振り返れば、大きなイノベーションはこれまでにいくつかあった。たとえばモビリティに関して言えば、図2のようになるだろう。

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図2 移動手段に係るイノベーション(のごく一部)

個人のモビリティで言えば人類は「走る」ところから、馬や自動車、自転車やオートバイなど様々な移動手段を産み出してきた。もちろん公共交通を加えると、バスや列車、船舶や飛行機など、他にもたくさん挙げることができる。

これから先、もしかしたら、スターウォーズやバック・トゥ・ザ・フューチャー2のようにぷかぷか宙に浮く個人用の乗り物なんてのが発明されるかもしれない(=破壊的イノベーション)けど、今のところ上記に挙げた乗り物の中で継続的なイノベーションを模索せざるを得ないのは間違いない。

だけど僕らはもう自動車が何なのか知っている。新幹線も、飛行機も、オートバイも。だって、僕たちはこれらがフツーに整備された社会で生まれ育ってしまったんだもん。だからちょっとしたCMやチラシを見ても、たいして興奮しないのかもしれない。

ここで「なんで売れないんだ。最近の若者はダメだ」なんて居酒屋で愚痴っても何の意味もない。そうなってしまったものは仕方ないのだから。このような時にこそ戦略思考である。このような場合 Primitive(原始的) – Innovative(革新的) と言う軸で、先進的な機能や、付加価値を説明するだけでは弱い。まぁ、なぜ弱いかは拙著を読んで頂くとして(笑)、たとえば軸を増やす、すなわち三次元で考えたりすると、もしかして新しい戦略が見えてくるかもしれない。

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図3 パルクールと母ちゃんの散歩

歩きよりも馬、馬よりもバイク、バイクよりも自動車、自動車よりも新幹線、新幹線よりも飛行機と考えたのが Primitive – Innovative 軸だったけど、成熟したマーケットの場合  Extreme – Boring 軸なんてもありかもしれないよ。

たとえば「走る」というものを考えた時、僕の母ちゃんが近所のオバチャンたちと散歩をしているところを見たって、面白くもなんともない。だけど、オリンピックでボルトさんが走るところを見て、多くの人が興奮したのはなぜだろう。あるいはマラソンを見て僕らが感動するのはなぜだろう。

ここで言えることは、たとえ移動手段が技術的に原始的(Primitive)であったとしても、それが常識の範囲を超えて(Extreme)いれば、観る者に強烈なインパクトや感動を与えることができるってことだ。

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図4 Primitive – HighTech / Extreme – Boring Quadrant

歩きやチャリよりも自動車を持つ事の方がカッコイイというのがこれまでの考え方。でもそれだけでは今どき「欲しい。買う!」とまで思わせることはなかなか難しい。図4にある通り、どれだけハイテクであっても、必要としていない人には興味がないからだ。逆にただ「走る」だけであってもパルクール(Parkour:仏=フリーランニングとも言う)のような常軌を逸したことをしている人たちは、であるが故に、それを見る僕たちに、強烈なエキサイトメントを与えてくれる。

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=QrdSBvtYn2M?hl=en]
パルクール

機能的に Primitive だからダメなのではない、たとえ、どれほど高機能であっても、それをツマラナく伝えている限り、製品に興味を持ってもらうことは難しい。逆に言えば、機能的に負けている製品であっても、勝負することは可能である、ということも意味する。

満たされた時代、満たされた世代に訴えかける要素の一つは、たとえば Extreme であること、といえるのかもしれない。

【蛇足】
パルクールは見てる分には面白いけど、間違っても自分でやってはなりませんよー。死んじゃうよー。2階やら3階から飛び降りて、平気なのは彼らが普通の人間ではないからです。では、僕らはどうすればパルクールをできるのだろうか。僕らは一生パルクールをできないのだろうか?それはあまりに不公平というものである。

そうだ、このような時こそテクノロジーだ。パルクールを好きなだけできるのがゲームの世界だ。アサシンクリードは、中世のエルサレムやダマスカス、ヴェネツィアやフィレンツェ、そしてローマの街を好きなだけパルクール(フリーランニング)できるよ。壮大なストーリーと、驚異的なグラフィック、そして素晴らしい爽快感は、まじでひっくり返るほど面白かった。

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=282amTYcr5Q?hl=en]
アサシンクリードでパルクール

そう言えば、もうすぐアサシンクリードの最新版 ブラザーフッドが発売される。ってことは、僕自身も年末はもしかして16世紀のローマの街を縦横無尽に走り回ることになるかもしれないな。いや、別に宣伝してるわけじゃないっすよ笑

[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=zzNs4-kRLaE?hl=en]
Assassin’s Creed Brotherhood E3 Trailer

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