PDCAが回らない5つの理由

PDCAの時期がやってきた

4月1日は新年度のはじまりってことで、多くの企業で今期の目標やら計画なんかが発表されていることと思います。4月1日ほど日本中で「PDCAをしっかり回していきます!」って叫ばれている日はないでしょう。それに4月1日は新入社員がはじめて会社に行く日ですよね。「社会に出たらホウレンソウとPDCAはキホンだ!」教わったことでしょう。そうです。PDCAは日本の企業社会で生きていくためにとても重要な言葉です。おまじないです。南無阿弥陀仏と同じです。とりあえず唱えとけ、みたいな。

ちなみに僕はマイクロソフト勤務時代から一貫した思想として、セールス、すなわち営業という業務について言えばPDCAはダメだと思っています。僕自身当時から独立した現在も何か物事を始める時にPDCAで考えたことは一度もありません。その理由は「よくわからない」の一言に尽きます。そして、よくわからないのに、みんなが当然わかっているものとしてPDCAを唱えるのに、僕は違和感を感じるワケです。

本当は多くの人が知的生産業務ではPDCAはうまく回らないってことに気づいていると思うので、その理由を5つほど挙げてみたいと思います。

その1 PDCAそれぞれの意味を完全に説明できる人がほぼいない

PDCAが PLAN-DO-CHECK-ACTION の頭文字を取ったものであることは、ほとんどの人が知っていると思います。しかし、それぞれの意味を説明せよ、と言われるととたんにわからなくなるところがPDCAの落とし穴です。Planが計画ってのはわかりますよ。Doが実行ってのもわかります。問題は次です。Checkって何でしょうね。もちろん検証ってことなんでしょうけど、セールスにおいて検証って何でしょう。売上報告を作ることでしょうか。確かに売上レポートをCHECKすることは重要でしょう。もちろん、売上が目標を達成しているのであれば、CHECKは無事クリアとなり、より良い顧客満足のためにさらなる付加価値提案活動(Action)をすれば良いでしょう。しかし、もしCHECKの段階で目標を達成していないとなると、一気に問題は複雑になります。1社、1社のアカウントプランを作り直すのか。重要顧客を抽出するような集中型で行くのか、それとも幅広いマーケティング活動に切り替えるのか。そもそも、期中にイベントや展示会への出展などの予算を切り替えることが本当に可能な経営になっているのか根本的なところに行き着いちゃうに決まっているワケです。そもそもPDは「計画して実行」なのにCheckの後のActionは「Checkの結果を元に計画を修正し実行する」ってことで「PD≒A一文字」なのも、なんとなく納得出来なくないですか。

その2 PDCAはみんな独自の解釈と理論を持っている

PDCAは非常にシンプルな言葉で、しかも一見わかりやすいので、中小企業から大企業までみんなPDCAを言うわけですが、実は一人ひとりその解釈が違っていたり、独自の理論を持っていたりするので共通言語として成り立っていないケースが目立ちます。特に大きなズレが生じるのが、これまたCheckとActionです。売上レポートを作成し報告することがCheckでしょうか。それとも1案件ごとに計画(Plan)とのズレを事細かにチェックすることがCheckなのでしょうか。契約に至るプロセスを一挙手一投足までいちいち報告することがCheckなのでしょうか。これはCheckに対する「粒度」が統一されていないことから生じる齟齬です。特に最悪なのは、売上が予想を下回っている時に上司が、そのさらに上の上司へ報告(言い訳)するために、理由(言い訳)を必要とし始めた時です。こうなると、必然的にCheck(言い訳)の粒度は段々と細かくなり、状況が悪くなればなるほど報告のための報告が増え、自由とゆとりはなくなり、マイクロマネジメントという最もモチベーションが下がる由々しき状況に陥ることになるのです。Checkの粒度は統一し、個人の独自の理論や見解が入らないようにしておかないとPDCAはやはりおかしなことになるでしょう。さらに言うとCheckを元に次の変更を加えるのがActionで、その次にまたPlanに戻るんですね。では2周目のPlanを再度作る時は、その前のActionの結果をCheckしなくても良いのでしょうか?これもちょっと納得できません。現実を鑑みれば PDCACACACPDCACACACACPDCA,,,,という感じになるのはないかと思います。つまりPDCAはサイクルではないってことです。ってか、よく考えてみると、この解釈がすでに僕独自のものになっちゃってますね。ほらね。

その3 PDCAをしっかりやりますって言えば良いと思っている

PDCAという言葉自体が免罪符になっているケースも見受けられます。「PDCAをしっかりやります」というのが実際には「頑張って営業に行きます」とイコールになっちゃってる場合が多いような気がします。PDCAが重要と言いながら、走りながら考えよう、とか、とにかく足で稼ごう、とか言い出すのは一体どういうことでしょうか。それはPDCAではなくKKD(勘と経験と度胸)って言います。本来PDCAはもっと科学的で、属人性や感情論とは切り離されたロジカルな行動理論のはずです。もしどうしてもPDCAでやるというのであれば、マネジメントは「頑張るのが大嫌いな人」に任せるべきです。営業は知的生産活動です。付加価値を明確にし、それを伝え、その価値に見合った対価のハンコをもらってくるのが営業の基本です。頑張るのが嫌いな人は、何度も何度もお願い営業に出かけることを好みません。代わりに付加価値の明確化やコミュニケーションの仕方を徹底的に練り、そのスキルアップに努めるでしょう。コミュニケーションやプレゼンテーションのやり方こそPDCAで改善していくべきものなのです。

その4 PDCAを意識して仕事をしている人がほぼいない

期が始まる時は皆が思いを新たに計画を立て、それをPDCAで回していきますって宣言するんです。ビジネスにおける期初のPDCAって言葉は、新年の抱負に出てくるダイエットって言葉みたいなもんです。大体1ヶ月と経たないうちに忘れ去られていくのです。もしPDCAのサイクルがMECE(もれなくダブりなく)なのであれば、僕らがこなしている仕事の一つひとつがそれぞれ、P、D、C、Aのどれかに必ず属しているはずです。特に売上レポートや営業の進捗の確認、つまりCheckの後、本来は次善策を作るというプロセスに移行しなくてはならないはずなのに、また明日から何事もなかったかのように顧客に振り回される日々に戻っていくのです。Checkの次はAction(別の手を打つ)なのにDo(これまで通り)を続けてしまう。なぜでしょうか。それはみんなPDCAって言葉を忘れちゃってるからなのです。

その5 PDCAを回す、みたいな言い方をするけど回らない

PDCAはスパイラルアップを前提としたイテレーションモデルです。すなわち「改善」が求められるような作業にこそPDCAは向いているのです。だから営業活動という点では「提案資料の内容」や「プレゼンテーションスキル」などはPDCAで改善させていくのは大いにありでしょう。でも「今期営業予算達成のためにPDCAを回す」というのは、言葉的にどう考えてもおかしいことに気づかなくてはなりません。そのような漠然とした営業活動に対してPDCAなんて言って本当にぐるぐるPDCAが回っている組織を僕は見たことがありません。特にPDCAのうちPばっかりこねくり回して、全然Dに行かないというケースは至る所で見かけます。逆にもし本気でPDCAを営業活動に適用しようとするならば、営業活動とは別の仕事(報告、計画立案)が激増するだろうし、それに合わせて柔軟でスピーディな意思決定ができる経営に変えていく必要があるんじゃないかと思います。

Productivity、Creativityは車の両輪

元々PDCAはアメリカの統計学者であったエドワーズ・デミング博士が、敗戦後の日本において工業製品の品質改善モデルとして提唱した理論です。実際に製造業においてPDCAは基本的な考え方となり、高度成長期の日本製品の高品質化に大きく貢献したことは事実です。製造の現場では、無駄を減らし、不良品を減らすことが何より大切です。日本製品の優位性はまさにそこにあり、高品質でありながら、短納期、低コストを実現することが成功への近道だったのです。PDCAの目的はProductivity(生産性)とQuality(品質)であり、その生まれからして「無駄」や「失敗」や「予定外」を嫌う思想なのです。これが営業の現場にそのまま持ち込まれればどうなるかなんて簡単に想像出来ますよね。営業はお客さんありきの仕事です。こっちがいくら詳細な計画を立てようとも、お客さんがその計画通りに動き、予定通りのタイミングで契約してくれる、なんて都合の良いことはなかなか起きないし、もし起きたとしたら、それは「計画が良かった」わけではなく「運が良かった」と考えるべきです。マーケティングや営業は今様々なテクノロジを活用して採れる戦術の幅がとても広くなっています。これまでは不可能と思われるような顧客にもリーチできる時代になりました。僕は営業には必ず成功するというモデルは存在しないと思っています。成功の数だけパターンがあるのです。だからこそ重要なのは発想力であり、好奇心であり、探究心であって、これらがCreativityに繋がるのではないかと思います。

PDCAからEAチェーンへ

僕自身がマイクロソフト勤務時代に営業活動において基本としていた思想が、リデル・ハートの「間接アプローチ戦略」、そしてJ・C・ワイリーの「順次戦略と累積戦略」です。どちらも軍事思想家が著した戦略概論ですが、ここから得られる示唆は非常に富んでいて、ビジネスでも活用できる考え方がたくさんあります。書籍の内容はまた別の機会に譲るとして、これらの英知と実際にそれを実践して生まれた僕らの行動原理が「EAチェーン」ってワケです。EAチェーンとは「実験(Experiment)」と「適用(Adapt)」を繰り返すということです。営業における新しい取り組みをとにかく実験的にやってみる。お客さんのために提供できること、提案できること、貢献できることを考え、それを実験的にやってみるってことです。実験であれば、誰も失敗しません。あるいは失敗さえも学びになります。うまくいくならば、以後営業活動に適用させます。たくさんのおもしろ実験をみんなで考え、次々に実行していくことです。どのように実験を進めるか、予想通りに行かなかった場合はどのように対応すべきか、その行動規範は、リデル・ハート先生の「戦略の八原則」に従うことで、成功率は飛躍的に高められるでしょう。PDCAとEAチェーン一体どこが違うのか?確かにプロセス自体は非常に似ているのは間違いありません。しかし、思想としての根っこが違う点が重要なのです。PDCAは失敗や不良を減らすための収束型の思想です。EAチェーンは失敗しても良いから独創的な実験を考え、その体験を通じて様々なことを学ぶ発散型の思想です。

PDCAという言わば常識に縛られることなく、独創性で勝負する営業チーム、これが今日本のビジネスで最も求められているのではないでしょうか。営業こそクリエイティビティですよ。自由な発想で提案活動を行うのです。ずいぶん長くなったので今日はこれまで。ちなみにリデル・ハートの戦略論からEAチェーンまで、戦略思考の教科書にすべて書いたような気がします。ぜひ暇な人はチェックしてみてくださいね。

TEDを有効活用して年間10万円の節約!

By 2013/02/19 No tags Permalink

ネットサーフィンをしていたら、いきなり画面が回転して腰を抜かしました。どうやら、Google検索で”do a barrel roll”と入力すると画面が回転するようです。*コピペだと動作しません。

ところで、私は欲しい本があるとすぐにAmazonで購入してしまい、翌月のクレジットカード明細に怯えて暮らす日々を過ごしていました。しかし、それは3週間前までの私です。私はTED節約術によって人生が変わりました。TED節約術は至極簡単で、欲しい著者の名前をTEDまたはYoutubeで検索する、そしてTEDプレゼンを見て、さらに詳しく学びたいと思う本を購入するように変えただけで、クレジットカード明細の恐怖とおさらば出来ました。


シーナ・アイエンガー:選択の科学 -1,700円

“なぜ人間は不合理な選択してしまうのか!”、選択に秘められた謎が具体的な例を用いて説明されています。

ダニエル・ピンク:モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか -1,890円

21世紀型モチベーション管理手法を軽快なタッチで描かれています。Googleの労働時間の20%の時間は好きなことをやってもよいとする、「20%のルール」が21世紀型モチベーション管理の代表例です。GmailやGoogle AdSenseなど優れたサービスもこのルールから生まれています。ハイコンセプト(1,995円)では、21世紀活躍出来るビジネスマンは左脳思考と右脳思考を使い分けることはできる人物であると述べています。なぜなら、右脳思考はコンピューターに代替されない仕事だからです。

アンドリュー・マカフィー:機会との競争 -1,680円

“ロボットがあなたの仕事を奪う、第三の失業の波を人類社会は乗り越えられるのか!?”、センセーショナルなキャッチフレーズが印象的な本です。昨年の将棋電王戦で、コンピューター代表のボンクラーズが米長邦勇永世棋聖を打ち破ったのには驚かされました。

ドナルド・ノーマン:誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 -3,465円

デザイン界の大御所、複雑さと共に暮らす──デザインの挑戦の中で、アフォーダンスの使い方は間違いだったと素直に謝罪し、器の大きさを世界に示しました。

キャスリン・シュルツ:Being Wrong: Adventures in the Margin of Error -17.81$(洋書)

後悔の科学、人は間違えた時ではなく間違えに気付いた時に恥ずかしいと感じると力説しています。裸の王様もそうでしたね。




合計:13520円 or TED:0円

あなたは、どちらを選択しますか。


是非、気になる本がありましたら、こちらのAmazonリンクから購入してください!

[3Dプリンタ] 第三次産業革命に乗り遅れないための数学知識 その1 デカルト座標

By 2013/02/02 No tags Permalink

先日、3DCGソフトウェアの123D Designを使用して戦闘機を作りました。しかし、あまりに作品の出来が酷く、ピアズマネジメント品位を卑しめたとして、始末書を書く羽目になりました。その敗因を仮説思考した結果、3DCG扱う上で必須となる3D数学の知識が不足していることを発見しました。そこで今回は、3D数学の勉強をすることにしました。


デカルト座標


中学校で習う、馴染み深い座標系が2次元デカルト座標です。2次元デカルト座標は原点と呼ばれる座標系の中心点、x軸とy軸それぞれ点の位置で座標を表します。3次元デカルト座標は2次元デカルト座標に一次元を足して、x軸、y軸、z軸の3軸で座標を表します。たった一つの軸を追加した結果、難易度は10倍以上にレベルアップします。


2次元デカルト座標の長方形


3次元デカルト座標の長方形(x軸,y軸は上図と同じ)


座標空間


3Dグラフィックの世界では、「右手系座標」「左手系座標」のどちらかの手法を用いて、3Dグラフィックを作成するそうです。コンピューターの平面画面上で、3Dグラフィックを表しているため、扱いにくいのかもしれませんね。


参考文献:3次元コンピュータグラフィックスの 座標変換 – 高知大学

フィボナッチ数列とグローバル化で仕事をなくす若者達

By 2013/01/31 No tags Permalink

今回は、Rubyでフィボナッチ数を計算するコードを書きます。コード総数は10行にも満たない非常に短いコードです。

まずターミナルにvi febonaki.rbと記述します。

その後、viで作成したファイルにコードを書きます。

viをescを押して後に、:wqで閉じます。コードの記入は以上で終わりです。早速、 ruby febonaki.rb とターミナルに記述します。

上記の画像のように、フィボナッチ数が10回分計算されていると思います。10.times doの数字を増やせば、記述した数字の回数分、フィボナッチ数が計算されます。

このように、昔の人が長い時間を要した計算を、現代ではプログラムを組めばいとも簡単に、しかも正確に実行してくれます。私は、昨今の雇用問題は、まさにこのようなソフトウェアによる人手の省略、ロボットによる自動化、グローバル化などの影響だと思います。今後10年後も食える仕事とは何かを私自身も日々考えています。その戒めのためにも、私はこの簡単なプログラムを定期的に実行しています。ソフトウェア、ロボット、海外の人件費の安い国と物量で対抗しても日本の物価水準では絶対に勝てません。それでは、どのように仕事すれば、代替されない人材になることができるでしょうか。私が一つそのような人材を挙げるとすれば、ビジネスの仕組みを作れる人材だと思います。10年後、20年後どのようになっているか、今から楽しみです。

*作業環境はmacのターミナルを使用しました。
*rubyのヴァージョンは1.9.3p194を使用しました。

アントプレナーを志す者が観るべきTED5選

By 2013/01/29 No tags Permalink

本日は、アントプレナーを志す人達がインスピレーションを受けられるTEDをキュレーションしました。TEDとは、学術•エンターテイメント•デザインなど様々な分野の第一人者がプレゼンテーションを行なうイベントです。そのTEDカンファレンスに出席するためには年会費7,500$を支払う必要があります。しかし、TEDの精神である「ideas worth spreading」の元で、プレゼンターの講演をインターネット上で動画を無料配信しています。


おすすめのTED5選


Matt Cutts: Try something new for 30 days


。3分間の短いプレゼンテーションで、試しに30日だけやってみようと、軽妙に論じています。継続は力なりをまざまざと示してくれています


Tim Brown: Tales of creativity and play


画期的なプロダクトを排出するデザイン•ファームIDEOのCEOティム•ブラウンがデザイン思考についてのプレゼンテーションをしています。このプレゼンテーションでは、創造的思考と遊ぶの間にある関係を説いています。また、人は他者からの判断を恐れて、得てしてアイデアを共有しないことがあるとも語っています。この恐れを克服して、多くの人々とアイデアを交流させた時に、イノベーションが発生するのかもしれせんね。


Matt Ridley: When ideas have sex


このプレゼンテーションでは、人は人類史を通して、人類は新たなアイデアを交流によって生み出した、個人ではなく、集合的な脳の賢明さが重要と説いています。昨今のWeb上のオープンソース化の進展、ソーシャルネットワークによる共有は今後どのような影響をもたらすのか、今から楽しみです。


Salman Khan: Let’s use video to reinvent education


教育に破壊的にイノベーションを起こしたカーンアカデミーの創設者サルマン・カーンが新たな教育の姿をみせてくれますです。モチベーション、フィードバック、データ分析などの最新の科学を用いて、如何に教育を再発明したかが分かり易く説明されています。


Jane McGonigal: Gaming can make a better world


現実世界にある問題を解決するために、ゲーマーの力が役に立つと主張しています。既に、World Without Oil,Superstruct,Evokeなど社会問題を解決するソーシャルネットワークゲームをリリースしています。非生産的活動とされているゲームを、社会問題を解決するツールとして利用する考え方は面白いですね。それでは、僕は戦乱の世を治める覇者となるため信長の野望の世界に戻ります。