環境適応のパラドックス
好循環を生み出すプロセスは、いちど確立されると、時の経過とともに安定化していき、組織学習を重ねることで、プロセスに内包されたある種の自律的な原則を持つようになります。
経営者にとって悩ましいパラドックスが生まれるのは、この瞬間です。
このプロセスがうまくいけばいくほど、内部では原則への固着化が始まり、ある時点で、本来の目的が自己目的化する相転移が起こります。相転移したあとの組織は外部環境の変化にかえって鈍感になり、自己保存を目的とした行動が頻繁にとられるようになり、自己の存在意義は、当初掲げられた目的を達成することからプロセスを改変することへの抵抗へと変質を遂げることになります。
変革を拒むもの
激変する世界で生き残るには自らを変革させる必要がある、ということは誰もが理解しています。しかし、多くの場合うまくいきません。
失敗が続く組織では、トップから現場まで「恐怖」「羞恥」「怠惰」「思い込み」という四つの感情が各人の頭の中に堅牢な壁を作り、自らの変化や自らの成長を拒んでいます。この壁の内に棲む思考は、自ずと他者との対話を拒絶し、未来志向ではなく過去に撞着することになります。硬直化した思考は硬直化した組織を招きます。硬直化した組織は例外なく活発な対話が消えてゆき、異分子同士の接触による化学反応もなくなり、創造の芽はついばまれます。
このようにしてリーダーにとって最も辛い状況である、やる気のない、正確な情報が上がらない、結束力のない、笑顔のない停滞した組織ができあがります。
組織を “Re:design” する
「変革」は無自覚なかたちではなされることはなく、人々のあいだに理念が共有され強い意志の力が発揮されることが条件となります。そしてその変革の主体的な担い手は常に内部の人間です。
組織の姿をリーダーの内面を映し出す鏡としてとらえるなら、負の循環を断ち切り上昇気流に乗せるのも、実はリーダーの決断次第であるといえます。今日明日の売上に貢献しない「変革」や「人材育成」に限られた資源を投入するという判断も、人間の持つ負の感情をいかにコントロールするかということも、すべてはリーダー自らが決める「自分たちの未来」であるといえます。
中林秀仁
追記:かなり難解なので、次回より僕の方で細かい解説をしていきます。一瞬お経かなんかかと思ってしまったあなたは間違っていません。
筏井哲治
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