代表コラム: 問題は「減少」より「偏り」

By 2010/02/10 No tags Permalink

こんにちは。

ピアズ・マネジメントの中林です。

前回に引き続き『「課題先進国」日本で生きる』の二回目です。

人口問題は「人口減少」の文脈で語られることが多いのですが、これは問題の影響を過小評価し、自分とは関係のない話か、あるいは影響が出たとしてもずっと将来のことだという思い違いを生む原因になっています。

なぜならば、前回の図の通り総人口の推移を山に例えると、頂点である2006年を真ん中とした30年間の人口増減比率は3%未満に過ぎず、人口がさほど増えてきたわけでもなく、さほど減るわけでもないという非常になだらかな高原状態が続くため、あたかも平坦な道を歩んでいるかのように思い込んでしまうからです。

この感覚にとらわれることなく現実を直視すれば、我々が最初に直面する問題が見えてきます。それは人口が減ることではなく、人口が偏ることによって起こされる問題です。経済に与える影響は、ミクロ・マクロ両面において、総人口減少よりまず先に人口構造の変化を考えなければなりません。

少し背筋が寒くなるのは、このインパクトは50年後になってやってくるわけではなく、この10年の内に巨大な津波としてやってくることです。

すでに老齢人口比率世界一である日本は、これからの10年間で生産年齢人口がさらに760万人減少し、老齢人口が650万人増加します(下図)。しかもこの流れはその後も止まることはありません。老齢人口が3,600万人前後で高止まりするのに対して、生産年齢人口は10年毎に700万人ずつ減少し、2035年には生産年齢人口は6,300万人、老齢人口は3,700万人になると推計されています。

ちなみに私が生まれた1969年においては生産年齢人口7,200万人と老齢人口730万人であったことを考えると、現役世代の負担が著しく増えることは容易に想像がつきます。日本は人類史上はじめて平時における「超高速の人口構造変化」を体験することになります。

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国立社会保障・人口問題研究所「都道府県別将来推計人口」より作成

次回は、「地域経済疲弊の加速」です。

ピアズ・マネジメントの考える世界

By 2010/02/02 No tags Permalink

こんにちは。

ピアズ・マネジメントの中林です。

実験好きな二人が会社を起こして5ヶ月ほど経ちました。 順調とは行かないまでも徐々にクライアントも増え、各方面から大変多くの(厳密にはポツポツと)お問い合わせをいただくようになりました。

この場をお借りして、まずは御礼を申し上げます。

「ところでどんなことをやっている会社ですか?」というご質問をたびたびいただいております。

その件につきましての回答はひとまずヨコに置いて、まずはわれわれの活動の根底にある世界観(ちょっと大袈裟ですが)を披露させていただきたいと思います。

急がば回れではないですが、世界観は経営哲学に通じるものですし、そこに共鳴していただける「何か」があれば、コンサルテーションというわかったようなわからないような業務内容をお伝えするよりも、われわれのことを理解していいただく近道になるのではないかと考えています。

またこれが、確固たる世界観が形成されている(いわゆる大人の眼を持っている)皆さまご自身において、あらためて「この世界とは何ぞや」と問い直すきっかけになれば、これほどうれしいことはありません。

では前置きはこのあたりにして、本題に入っていこうと思います

「課題先進国」日本で生きる

予言できる未来

我々は何が起きてもおかしくない時代、激動の社会を生きています。一寸先は闇ともいえますが、しかし一つだけ予言できる未来として経営学者ドラッカーは人口問題を挙げました。

人口問題には少子化、高齢化、人口減少などいくつかの側面があります。歴史をふりかえれば、日本を含め多くの国が人口減少を乗り越えてきましたし、また現代においてはフランスやスウェーデンのように少子化を克服した例もあります。

しかし、現代の日本が抱える人口問題はこれまでとは若干違う様相を呈しています。その特異性とは、大きい人口を抱える国家全体が急速に老いることであり、規模とスピードにおいて有史以来のことだといわれています。日本が「課題先進国」である所以はここにあります。

日本では人口統計上、15-64歳を生産年齢人口、65歳以上を老齢人口と区別しています。実はこの経済活動の中核を担う生産年齢人口が1997年をピークに急速に減少しています。

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国立社会保障・人口問題研究所
「都道府県別将来推計人口」より作成

変化は驚くべきスピードで起こっています。たとえば、1985年から2009年の24年間で総人口は5.3%増と微増にとどまっているのに対して、ほぼ同等の期間(1985-2010年)で、老齢人口比率は10%から23%へと急激なカーブを描いて上昇し、人口の構成比率はガラリと変わってしまいました。

人口問題は影響が顕在化するのに時間がかかるため同時代の人間には認識しにくいのですが、日本は長いすべり台を勢いよく滑り落ち出してからすでに10年以上経っていることになります。人口ボーナスを謳歌できた時代は10年以上前に終わっており、これから数十年は人口オーナス(負債)の時代を生きていくと腹をくくったほうがよさそうです。

次回は、『問題は「減少」より「偏り」』です。