冒険の旅へ出るにあたり、差し当たってやるべき事はなんだろうか。そうだ。決まっている。ルイーダの酒場へ行って一緒に危険を共にしてくれる命知らずな冒険者たちをかき集めることだ。
ルイーダの酒場には戦士や武闘家、魔法使いや僧侶など様々なパーソナリティやスキルを持った人々が集まっているので、その中から仲間を選抜するわけだ。ここで間違っても勇者以外全員武闘家なんてことにしちゃダメである。
確かにレベルが低いうちは、低コストで強さを発揮する武闘家は冒険には最適と思えるかもしれない、しかし、魔法による攻撃や、回復などのサポートがなくてはやがて冒険は破綻することになる。
結局同質の能力ばかりを持った人ばかり集めてチームを編成しても、強いのは最初の一瞬だけで、厳しい戦いになればなるほど、そんなチームは全滅して、代わりにどこの馬の骨とも知らない勇者にバラモスの首を取られてしまうわけだ。
そうだ。僕らは子供の頃にRPGをやりながらすでに多様性(Diversity)の重要性をしっかりと理解していたはずだ。確かにルイーダの酒場の中では、戦士は戦士で集まり、魔法使いは魔法使いで集まり、それぞれが、それぞれのグループで腕っぷし自慢や魔法自慢、あるいは互いにののしり合いをしていたかもしれない。しかし、一旦勇者の下でパーティを組んだら、それは生死を共にする仲間となる。
ビジネスも同じようなものかもしれない。普段は第1営業部とか、第3開発部とかに所属して部門的には対立しているかもしれないが、いざプロジェクトとなれば、リーダーの下一致団結して助け合いながら前進していかねばならないのである。
ちなみにマイクロソフトでは開発にあたって異なるスペシャリティと役割(ロール)を持ったメンバーからなる小規模なチームをチーム・オブ・ピアーズ(Team Of Peers )と呼んでいた。もちろん人事上の所属は開発部門や品質管理部門に分かれているが、プロジェクトに応じてまさにルイーダの酒場のように人が集められるわけである。
さらに外資系企業ではプロジェクトに「コードネーム」というものをつけることが多いような気がする。たとえばマイクロソフトの場合最近ではLonghorn(Windows Vista)やVienna(Windows7)など, 僕が担当していたVisual StudioではWhidbeyやらOrcasやらRosarioやら、SQL ServerではYukonやらKatmaiやら、あらゆる製品に全部わかりにくいコードネームが付いていた。もうね何がなんだかよくわかんなかったし、こんなのいったい何の意味があるんだ?ただのカッコつけマンか?と思ってしまいそうだが、実はこれは人事上の部門ではなく、プロジェクトと言う単位で集う多数のメンバを一致団結させ、プロジェクトに執着させるために有効な手立てなのである。こう言う低コストで打てる手は日本企業もどんどん真似すべきではなかろうか。
リーダーは異なるパーソナリティを持った複数の人間を取りまとめていかねばならない。それは大変な仕事である。可能であれば管理しやすいメンバ構成を願うものである。でも、それではダメだ。なぜならば困難にぶつかった時に、これまでにない発想力で障害を乗り越えるには、多様性や柔軟性は絶対に必要なものだからだ。
リーダーの仕事は仕事そのものをすることではなく、チームメンバの仕事が阻害されそうになる要因を早くに察知して、障害を取り除き、チームメンバのポテンシャルを最大限に引き出すことにある。勇者の大切な仕事は目標を決めること、そして、その過程で発生する障害を除去することであり、求められるのは異質なパーソナリティを持ったチームメンバを一つの目標に向かってドライブさせる駆動力である。
それをしっかり理解した時にはじめて、リーダーたる者、まず何をするべきなのか、ほんの少しだけ見えてくるのではないかと思う。
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